トマト祭り(ラ・トマティーニャ)


日本には「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃソンソン」っていう歌がありますが、スペイン(トマト祭り)の場合「投げる阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら投げなきゃソンソン」になります。

バルセロナを午前4時に出発し、目指すはバレンシア州にある人口1万人以下の都市ブニョール。ミュートラベルという日本の旅行代理店のツアーに参加してのトマト祭り参戦です。なぜツアーって?電車代よりツアー代方が安く済むからという、それだけの理由です。

現地到着は朝の9時半。すでに街には、トマトで人を投げ殺してやるっていう感じで息巻いているスペイン人集団から、英語が世界の共通語であると信じて疑わずバーのおばあちゃんに英語でまくしたてる英国人or米国人、「今日はむちゃくちゃ中国人多いなぁ」ってスペイン人に言われる日本人など、世界のトマト野郎どもが集結しています。

みなゴーグルを頭に関ヶ原ならぬ市庁舎前へ向かいます。しかし、市庁舎前どころか、その100メートル前から人、人、人。前に進むこともままなりません。こりゃ、合戦に遅れるぞと、人をかき分けかき分け進みますが、埼京線のラッシュの中を先頭から最後まで進むようなもので、ゴールが見えません。遠くで合戦の音が聞こえるのが悩ましい。

マンションの住人から水攻めにも耐え、破れたシャツの矢をすり抜け、靴やカンといった違法兵器にも負けず、敵艦隊(トマトを大量に積んだトラック)を30メートル向こうに目視します。まるで遣唐使が唐の大地を見たときの感動とでもいうのでしょうか。「あったぁトマトぉぉぉ」。

トマト艦隊(このトラックはすでに全ての砲弾(トマト)を打ち終えてます。砲弾がある場合は写真など取ってられません)

しかし、トラックが通るべき道には人、ヒト、パーソンズ。そこをトラックが通るのですから、人はモーゼに切り開かれる水のごとく道の両脇・側道に押し出されます。でもその道は1万人以下の街の小路。唐の大地を見たは良いのですが、そこからは阿鼻叫喚の嵐。車が群衆を押し、その群集が群衆を押す。その一方、唐の大地を目指す遣唐使集団は車に向かって突き進む。あばらがきしむ音を聞き、肩が異様は方向に向かって曲がるのを見ながら、本当の危機を感じました。 トマトを投げるとかそんな次元ではなく、将棋倒しからいかにして逃れるかに必死です。おそらく来年あたりは、将棋倒しが現実のものになりそうな予感がします。

こうして、徳川秀忠よろしく関ヶ原につくことなく戦いはおわりました。シャツに残るナポリタンを激しく飛ばした程度のしみと、トマトがしみ込んだ靴だけが戦いの終わりを物語っていました。

腐ったトマト臭に包まれた帰りのバスは、関ヶ原参戦組の活発な会話と参戦できず組の寝音が響いておりました。

トマト祭り古戦場跡(泥水のように見えるのは全てトマト汁)

それにしても、なぜ海外に住む日本人は、海外に住んでいることを主張したいのでしょうか。バスの中は、スペイン観光組と、スペイン在住組、ヨーロッパ在住組から混成されていたようです。こうなると、こんな会話が。

ヨーロッパ在住組
「(脈略もなく突然)ほほぉ、あなたはトマト祭りのためだけに来たのですか?」 

観光組
「はい。そういうあなたは?」

ヨーロッパ在住組
「いやー、私はヨーロッパに半年ほど住んでまして。ちょっとついでに来ました」

スペイン在住組
「ヨーロッパからわざわざ大変ですね。僕はスペインに2年ほど住んでまして」

観光組
「じゃあ地元じゃないですか。すごーい」

両在住組
「いや、まだまだですよ。ちなみに、スペインのお薦めは・・・・・(つづく)」

こうした会話、気持ちは分かるのですが、なんとなーく腐ったトマト臭と似た匂いを感じてしまうのです。「俺は観光客とちがうんだぞ」ってね。基本は変わらないのですが。


スペイン旅行 ブログランキングへ

コメント

このブログの人気の投稿

MBA授業:1年目って本当に辛いの?

欧州MBAへの潮流は一時的?

海外MBA 受験:11.出願