定石は破られるもの?


昨年6月の成田発オーストリア行き、私は窓側3列の通路側を確保しました。長距離フライトでは子供が陣取る中央列前目を避け、便所に行きやすい通路側を確保するのが僕の定石でした。機内に乗り込むと窓側に向かって「クラブツーリズム」のタグを付けた高齢女性が2名座っていました。タグからしてツアーの一員なのでしょう。お互いの登山経歴とオーストリアに関する知識、そして飛行機の楽しみ方ウンチクを戦わせ、相手の鼻っ柱をへし折ることでこの後の旅全般の時間を優位に進めようとしているようです。飛行機の高度が上がる中、私のすぐ右隣りの女性が、窓側に座った女性を徐々に圧倒していきます。ノックダウンのラウンドに入ったころ、フライトアテンダントが飲み物を持って来ました。私の右隣りの女性(右子さんと呼びます)は、内心「レフェリーに救われたな」という感じの表情を一瞬見せた後、すぐさま「赤ワインありますか?」と『旅慣れてますよジャブ』を窓側の女性(窓子さんと呼びます)に繰り出します。窓子さんも負けじと「私は白で」でかわします。そんな死闘の影響からか、フライト中盤以降、右子と窓子のトイレラッシュが始まります。40年~50年前の右子と窓子ならば、僕は座ったままで通り抜ける際のフィジカルコンタクトを楽しんだかも知れませんが、現実の世界は僕に頻繁な起立と着席を求めます。トイレラッシュが落ち着いたかと思うと、今度は免税ラッシュ。キャビンアテンダントを相手に、僕の前をカタログと大きな声での会話が通り過ぎます。次は再びトイレラッシュ。ワイン一杯トイレ一回のペースでトイレに行きます。。。

そんな事を思い出しながら、今日成田空港の自動チェックイン機の前で僕は席番号50Aを選びました。読みに読んでの決断です。機内真ん中の最前列が完全に塗りつぶされているのを見ると、子供の搭乗が予想されます。子供が叫ぶリスクを考えると、必然後列の価値が高まります。また秋のフランスと言えば、食への欲望に満ちた年金高齢者の憧れの地です。ワインおいてダントツの地位を誇るフランスを考えれば、デンプシーロール張りのトイレラッシュに見舞われるかもしれません。こうなると後部窓側のチョイスは完ぺきなはずでした。

しかし、世の中上手くいかないものです。羽生名人と言えど若手の広瀬棋士に王位を奪われたように、定石は破られるためにあるのです。何と窓側列の後部を取ったにも関わらず直前には12歳程度の女の子が2名陣取っているではないですか。羽生名人に52銀を撃ち込まれた時の加藤一二三先生の気分がうかがい知れます。ガールズ2名は機体が動き出す前からアクティブに叫び、動き回ります。かなりのショックに打ちひしがれてヘッドレストに頭を落とすと、後ろからも大きな笑い声がステレオで聞こえてきます。窓子・右子に似た笑い声。。。もしやと思うとツアー参加の旧ガールズ2名が例の主導権争いボクシングを始めてます。ひどい事に、通路側に座る1人の若手ガールを巻き込んでの乱闘戦となっています。「エッフェル塔には登るな。階段を登らされる。経験者は知っている」と若手ガールに訓示を垂れています。登り階段の数が観光価値を下げ始めるのは50を超えてからという方程式を知らないのでしょうか。議題は時にはワイン、時にはフランスの成り立ち、時には男論、時にはモニターの使い方など、多様にわたります。

結局、耳栓をしても何の意味もないほど賑やかな12時間を過ごすこととなりました。もう一度棋譜を見直し、次の定石構築にむけて復習したいと思います。そして、ありがとうJAL。さようならJAL


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