悪い情報は基本的に上司にあがってこない

みずほ銀行の暴力団融資、阪急阪神ホテルズのメニュー誤記(偽装?)など、社長が「私は知りませんでした」問題が多発しています。

こうしたニュースを受け、さまざまな会社で「良い情報は後でも良いから、悪い情報こそ最優先」といった指示が上司から出ているのではないでしょうか。私の部署でも、前々から「悪いニュース最優先」と言われています。

ハラスメントや情報漏洩などの明白に「悪いニュース」はもちろん上司にあがります。これは、情報をあげないリスクが高いからあがるのです。「知っていたのに情報を上げなかった」ということが後々おおごとになりうる場合、部下が上司に情報を上げるインセンティブは高まります。

つまり、悪のレベル(悪の明らかさ)と、ばれるリスクの2種が高いほど、部下は隠すことのリスクを恐れ、情報を上司に上げるインセンティブを感じます。

一方、誤記か偽装か第三者からは判断が難しいといった「悪のレベル」が低いもの、暴力団融資など「ばれるリスク」が低いものについては、「聞かれるまで黙ってる」というインセンティブが部下に高まります。あわよくば自分の任期中は隠しきれると思うのです。

そうは言っても、偽装や暴力団融資はまだまだブラックで、なかなか身近には無いでしょう。しかし、こんなグレーな例はあり得るのではないでしょうか。

部下:「このソフトウェアの開発費は1,000万円かかっていますが、売上は既に5,000万円を超えて、まだまだ伸びそうです。」

ソフトウェアといった無形資産であれば、開発費以外にコストはかかっていないと思い込むのが多くの上司でしょう。なので、多くの場合、上司はこう言います。

上司:「凄いじゃないか。そんなに売れているんだ?知らなかったなぁ。だったら、もっと開発しよう!」

しかし、実は部下が外部から買ってきたパソコンに自社のソフトウェアをインストールし、パソコンとして売っていたとしたらどうでしょう。パソコンとソフトの販売価格をそれぞれ20万円、1万円とすると、売上は21万円となります。これはソフトだけを売った場合と比べると21倍にも膨れ上がるのです。しかしパソコンは外部から購入しているため、利益絶対額は変わりません。むしろパソコンの在庫リスクや管理調整費などを考えると利益は下がるでしょう。こうして売上のマジックは作られます。

創意工夫で売上を伸ばしている部下は優秀です。問題は、部下にあるのではなく、こうしたカラクリは黙っていては上司にあがってこない、ということを見落としている上司にあります。部下にとっては「悪い事」をしている訳でもなく、上司が契約書を読まない限り「ばれるリスク」は低いからです。

言葉で「悪い情報を最優先」と言うだけでなく、部下のビジネスをしっかり勉強する努力が上司には必要なのです。もちろん、あからさまに不信の態度を示す事は悪影響を与えるでしょう。しかし、「しっかり見てるぞ」という抑止力は絶対に必要です。

知ろうとする努力もせずして「私は聞いてなかった」は、職務怠慢としか言いようがありません。

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