広島の土石流報道に感じる報道の無責任

一時期とある商品の自治体向け営業をやっていました。県庁や市役所などの自治体に、とある商品を提案するのです。しかし、営業のたびに感じたのは自治体職員の無気力と自治体の限界です。

昨日、広島で生じた土石流のため十数人の方が亡くなりました。本日のニュースでは、広島市役所による避難勧告の遅れが死傷者発生の原因にあると断じ、避難者の「勧告が遅すぎる」コメントを報道しました。

しかし、自治体職員の現実は「逃げる必要の無い勧告をすれば怒られる」「しかし、勧告が遅れれば怒られる」の板挟みなのです。事実、「勧告を出したくせに、何もおこらねぇじゃねぇか」と文句を言う住民は予想外に多いのです。

また、勧告に必要な情報が自治体には意外とそろってないのです。近年の予算削減で、水位計やカメラなどの情報収集ツールを設置することができず、現場で何が起こっているのかを遠隔から判断することが出来ないのです。現在稼働するセンサーの多くは10年以上経過したかなりのポンコツです。

リアルタイムな情報を持たない一方で、勧告の精度を求められる。これが自治体防災の現実なのです。結果、大雨が予想されるたび、自治体職員は自宅ベッドの横にパソコンを設置し、1時間おきに起きてはヤフー天気を確認するのです。時には自宅が危険にさらされつつも、他人の安全のために深夜の役所に詰めるのです。

こんなギリギリで運用されている自治体防災の内情を報道すること亡く、すべてを自治体のせいにして話を終わらせる報道機関に憤りを感じ得ません。

冷たい言い方ですが、自分の身は自分で守るほかありません。自己責任です。自治体の防災システムは自己防衛を助けるものであり、安全を保証するものではないのです。しかし、こうした報道が流れるたび、安全が破られる=自治体防災システムの不備という等式が暗黙裏に世論に形成されます。この等式の対偶は、「自治体システムが完全ならば安全は守られる」であり、自己責任という冷たい現実からの逃避なのです。

悲しい出来事ではありますが、やはり防災は自己責任という点を見失ってはいけないと思います。

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