日本のITサービスが世界で戦うための戦略 その2:普遍的なペインポイントを突く

前の2回の投稿では英語軸で考えることの重要性をお伝えしました。
"日本語ツールは、その生まれた背景から「多数に受ける多機能ツール」となりがちです。このため、そのツールを説明する日本語サイトも「盛りだくさん」となり、これを英訳すると、ターゲットと提供価値がぶれます。誰の何の困りごとを解決するツールなのか、がわからないサイトになるのです。必然的に、検索連動もしにくくなる"
 というのが前回までの話しです。

とはいいつつ、英語にすれば世界戦略が解決するわけではありません。シリコンバレーで大量の資金を確保できる米系サービス企業と競争しながら戦うわけですから、非常に綿密な戦略が必要となります。

そこで鍵となるのが「普遍的なペインポイントを探して、突く」という点です。

シンプルな宅ファイル便と独自の進化を遂げた勘定奉行

例えば、宅ファイル便ですが、これは「重いファイルがメールでは送りにくい」というペインポイントを解決するサービスです。

一方、OBCが出す勘定奉行は、もともとは「経理業務にかかる時間を削減したい」「経理情報を経営陣がタイムリーに見れる環境がほしい」といったペインポイントを解決していました。しかし、今ではERPや人事業務などに進出し「経理を中心とした総務業務を一括して自動化したい」というペインポイントまで幅を広げています。

この2つ、どちらが海外展開しやすいでしょうか?

断然、前者です。

後者については、ペインポイントが国によって異なるためです。米国では、日本同様のニーズはありそうですが、社会保険や医療保険の制度がことなるためシステムとしては給与部分でカスタマイズが必要となりそうです。

一方、東南アジアや南米などの途上国となると、会計制度自体が未成熟(賄賂や二重帳簿)であったり経理人材のコストが著しくやすいため、経理を効率化する価値が低くなります。

つまり、OBCは次々と新サービスを繰り出すことで、日本人の様々なペインポイントに応えてきました。まさに、国全体を取りに行く戦略です。しかし、これがために「誰の何を解決するものか」という点が見えにくくなる、そのままでは海外に適用しにくい、という状況を産んでいます。

ターゲットを絞った提供価値を書き出してみる

提供価値を簡単に表現すると、「自社の商品が『誰の』『どのような困りごとを』『どのように』解決するものか」と表現されます。

日本で進化を続けたサービスは、この「誰の」という部分が曖昧になりがちです。それは万人にウケるように進化してきたからです。ですので、このまま英語化すると、メッセージがボケてしまいます。

そこで、必要なのが自社プロダクトが「誰の」困りごとを解決するのか、を細かく書き出す必要があります。勘定奉行であれば、経理(財務)部、経営企画部、人事部の担当者であり、企業規模では人員数が限られる中小企業、業種では経理業務が煩雑になりがちな製造業、建設業、飲食業などでは無いかと妄想します。

このなかで、世界で普遍的に存在しそうな困りごとを拾ってみます。飲食業の場合、経理や経営企画、人事部が存在する飲食企業となると、先進国に偏る可能性がありそうです。

人事については、評価基準や人事制度(法定休暇や残業制度)などが異なる可能性が高くなりそうです。一方、製造業は国際分業が進んでいるため、比較的普遍的な働き方がありそうです。特に、移転価格税制や原価計算をとりあつかう経理作業については、国家間の差が少なそうです。

このように考えると製造業の経理担当者などが「誰」にしぼり込めそうです。職種分類についてはハローワークが出す職種表ほどの種類がありますが、まぁざっくりで進めてます。

絞り込んだターゲットの代表的な困りごとを全面に打ち出す

製造業の経理担当者であれば、在庫管理や仕掛品の原価計算、輸出入にかかわる税処理などが主たる作業になるでしょう。また、売掛金や買掛金の回転率なども経営陣は気にするかもしれません。こうした作業を楽にできるのであれば、それを全面に押し出します。

本社経理との調整が一番の困りごとであれば、「本社経理への報告を月10分に減らすツール」として打ち出します。

このキーメッセージに合わせて、サイトを構成し直します。日本語サイトの直訳ではなく、英語は英語用にコンテンツを組み直すわけです。

世界的に存在する困りごとに焦点をあてて、それを英語で発信する。これが最初の一歩となります。

ただし、これだけでは認知や利用がすすみません。ここを乗り越えるために、私はキャズム理論に基づいた広告宣伝・販売流通網開拓が最も効果的であると信じています。

ここについては次の投稿で説明します。

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