蔵書の苦しみ、それは本オタクの歓び
おおよそ1日1冊ほど本を読むのですが、悩むのが本の置き場。なんだか並べておきたいコレクターの気持ちや、二束三文で買われていく時のなんだか寂しい気持ちから、どうしても手元に置きたくなっちゃうんです。
僕は別に本オタクと呼べるほど本を読んでいる訳ではないのですが、この本に書かれている人たちのストーリーは、まさに本に魅せられた狂人達のストーリーとも言えます。ちょっと言い過ぎちゃいましたが、多分本にそれほど熱が無い人から見れば、狂人です。鉄道マニアが写真を撮りまくる姿、アニメオタクがDVDに撮りだめしまくる姿とかぶります。相手が本なので多少高尚に見えますが、やってることは同じ。
そんな、本好き達の蔵書にまつわる「ふふっ」と笑ってしまう小話が満載です。
「空いた本棚が、そのまま自分の心の空虚を表すようで、じわじわと哀しみが湧いてきた。これは前回の二千冊処分のときにはなかったことだ。売った量は、今回の方が少ない。ざっとだが、単行本六百冊、文庫六百冊のしめて千二百冊と踏んでいる。しかし、痛みが違う。平気のはずだった心が、想像以上にダメージを受けていることがわかった。“蔵書の苦しみ”は、処分した時にも感じるものらしい。」と本を失う痛みをつづりながらも、何もない所に静かに置かれた一冊の本に惹かれる筆者。スゴクわかります。
「本を読むと蔵書はふえます。それでいながら、明窓浄机、何もないところに本が一冊あって、それを読むというのが本を読む人の理想である。読んでしまったらその本はなくてもいいはずなのに、そうではないというおもしろさ。蔵書と読書の関係は矛盾したものだと思います。」「『本が増えすぎて困る』というぼやきは、しょせん色事における『のろけ』のようなもの。(中略)だから、『蔵書の苦しみ』については、他人に笑われるように話すのがコツだ。」とあとがきにあります。そんな筆者の思いから、この本には古書への深い知識の上に小さな笑いが必ずトッピングされています。
「【教訓 その七】蔵書はよく燃える。火災にはよくよく注意すべし。」この本のおかげで、また新しい「読みたい本」に出会う事ができました。それも、なかなか他の人には勧めてもらえないレアな本。
最後に、僕がこうありたいと思った一文。
「【教訓 その十】三度、四度と読み返せる本を一冊でも多く持っている人が真の読書家。」
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