(書13−11)『水惑星の旅』 椎名誠
原油はガソリン代に直結し、行楽シーズンなどはテレビでも騒がれるため関心は高いですが、水は「あってあたりまえ」の状況のため関心が薄いのが現状じゃないでしょうか。
しかし、「今後の人口増加とともに農作物の生産は加速し、同時に水資源の枯渇が始まる」というのは世界では常識となっています。
この本は、そうした水問題を考える上で最良の入門書と言えます。ほかにも柴田明夫氏の『水戦争』や吉村和就氏の『水ビジネス』などの本がありますが、この本が今のところベストだと思います。
僕を含め、多くの日本人にとって、「そうはいっても水は沢山あるでしょ」という心理的偏見があります。そして、この無意識な偏見が水問題よりもオイル問題を重要視させ、ダム問題を水質問題から汚職問題へすり替えてしまうのです。
この本では、椎名氏が世界を旅した中で実際に見て味わった水の経験が書かれているため、リアルに描かれた世界の現実がそうした心理的偏見を取り除いてくれます。また、「水問題」という難しい話ではなく、旅行記・冒険記として楽しむことができます。
簡単ではありますが、この本で新たに発見し、学んだパートを書き写します。
「カンボジアにあるトンレサップという非常に浅くて広い、雨期と乾期によって収縮拡大する巨大な湖は、糞尿と生活用水、そして飲み水が一体化しているところだった。そこに25万人が住んでいたが、そういう水に慣れている人々には至福のコップ一杯の水が、我々には猛毒に近い一杯だった。(中略)日本の川文化との極端な対比を思い浮かべ、やがて世界的な水飢饉になったときの生き残り競争の単純な未来図を見たような気がした」
「雨水利用建築の普及が次の『地球の水枯渇問題』の課題のひとつ。(中略)雨水利用は世界でドイツが一番進んでいて、すでにドイツの新築の家の8割ぐらいがそういうシステムを取り入れている」
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