(書13−27)『森林異変』 田中淳夫

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この前紹介した『里山資本主義』はいまでも書店の目立つコーナーを占めていますが、実際の里山はこちらの本にあるような気がします。

森林あふれる里山ではなく、森林があふれすぎる里山や森林が禿げきった里山がこの本にはあります。

これまで日本の林業というと、価格の安い外材に圧倒され、あえぎ苦しむ弱者のイメージを持っていましたが、どうも現実は異なるようです。あえぎ苦しむ姿は、決して外材のせいではなく、林業界が自ら招いたものなのです。

戦後復興時の大型木材需要に応えるには国産木材では足りず、必然的に外国から木材を輸入する形となりました。伐れば売れる時代は、植林なき伐採を推し進め、山は一気に荒廃します。

同時に、柱が部屋の中で露出する和風の家は減り、柱が壁の裏に隠れる洋式の家が増えることで、柱の美しさよりも機能性が重要性を増します。そして、吉野杉のようなブランド木材以外は、安値で買いたたかれる状況が発生します。

一方、林業界は復興時の補助金依存の体質から脱却できず、小売価格の下落に対し技術革新や産業効率化で対抗することができません。自ずと、小売価格の下落はそのまま山林保有者へのしわ寄せを引き起こし、さらなる山林の荒廃を推し進めます。

こうした現実が、統計数値とともに描かれています。『里山資本主義』では里山の美しさに心打たれましたが、『森林異変』ではその裏面を教えてもらいました。

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