バルセロナは本当に財政難?(2)


今回は資本・負債の部を見てみたいと思います。大きな数字を俯瞰してみると、資金調達については大きく流動負債(1年以内に返済予定の負債)に依存していることが分かります。流動資産が160百万ユーロに対して、360百万の流動負債ですので健全とは言いにくい状態です。


前受金を除いた流動負債を細かく見ていくと、最も大きいのがサプライヤーへの買掛金で70百万ユーロ、次いで未払税金で60百万ユーロ、未払報酬が60百万ユーロ、そして他チームへの移籍金の未払金が50ユーロ、銀行借入が30百万ユーロとなっております。

銀行借入についてはカタルーニャでは最大のLa Caixa(ラ・カイサ)から全額を借り入れています。La Caixaはバルセロナのメインスポンサーでもあり、カタルーニャの精神的シンボルであるFCバルセロナから簡単に手を引くとは思えません。また与信枠が40百万ユーロであることからも、La Cixaが突然貸し渋るということはなさそうです。

他チームから選手を獲得した際の移籍金ですが、どうも2年~3年にわたっての分割払いのようです(前ブログでは一括だと思ってましたが、間違いのようです)。国際的なチーム間のやりとりですので、バルサがある程度健全でありさえすれば、突然「今すぐ全額払え」と言われることは無いかと思います。

サプライヤーへの買掛金ですが、昨年度が65百万ユーロであり、買掛金の売り上げに対する比率は落ちております。本来は売上原価と比較できればいいのですが、私には比較できる項目が見つけられませんでした。景気悪化によって買掛金の支払日数が減っている可能性はありますが、正直私には何とも言えません。

報酬ですが、この多くは選手の年俸のようです。オフィススタッフの賃金は年俸と比較すると寂しいもの(サラリーマンの寂しさを痛感しました)なので、このパートの増減は大きく選手年俸に関連します。支払時期や回数は契約事項のため、予想外の早期支払ということは無いんじゃないかと考えます。

当座比率(流動資産を流動負債で割ったもの)が悪いため、負債提供者が「早く金返せ」あるいは「もうお金貸さないよ」と言うと、資金繰りに苦しむ可能性があります。しかし上述の通り、銀行借入の30ユーロは問題なさそうですし、報酬の60百万ユーロと移籍金の50百万ユーロ、税金の60百万ユーロも「即座に払え」とはいわれなそうです。買掛金支払期間の減少については不明ですが、70百万から数百万ユーロ減少したとしても現金不足に陥ることはなさそうです。

但し、スペイン経済の景気悪化やFCバルセロナの財務状況悪化が起こった場合、 買掛金支払期間の減少、移籍金の支払い時期の前倒しが起こり得るかもしれません。前者のリスクが低くないことを考えると、もう少し流動資産があった方が良いかと思います。

同時に、この状態では巨額の移籍金を伴う補強を行うと、キャッシュが足りなくなる問題をはらんでます。当会計期間後にチグリンスキー、イブラヒモビッチを獲得(マクスウェルは5百万ユーロなので大きな痛手とは思えません)したことを考慮すると、2009-2010年はかなり財政負担が増していると思われます。

今夏、アドリアーノとビジャを補強したバルサにとって、チグリンスキーの放出は不可避だったのでしょう。また、ビジャを獲得できた時点で、46百万ユーロの移籍金と12百万ユーロの年俸を支払う必要があるイブラは放出したかったのだと思います。また、セスク・ファブレガスですが、イブラを放出出来なかった事で移籍金の捻出は不可能かと思います。今年のセスクの移籍はありえないと考えてます。また、2012年にアウヴェス、ミリートが契約更新を迎えることを考えると、来年も誰かを放出しない限りセスク獲得は難しい様に思えます。

続き:バルサは本当に財政難?(3:追加資金調達について)

 


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